【夏休み企画】 ――連載3――  「親子で観るミュージカル」
脚本・演出家 石 塚 克 彦
大人と子供が 一緒に観るミュージカルには 年齢制限もある

 大人と子供が一緒に観て、一緒に共感できる劇場を考えると少なからぬ制限もある。自分の家庭以外、ほとんど社会的な体験のない五歳未満の子供の入場を制限していることである。

 大人と子供と一緒に観るミュージカルを上演し始めてから、かなりのステージとなった。
 終演後に回収するアンケートに「五歳未満の子供を家に置いて観に来た。会場に来てみたら、あきらかに五歳未満の子供を連れてきている人がいた。ズルイ人が得をする世の中なのですよね。私もズルして小さい方の子も連れてくればよかった。」というお母さんの意見が書かれているのが何枚かあった。
 それに反して「小さい子が入っていてウルサかった。わたしはシンケンにミュージカルを観ているのに。五歳より小さい子は入れないはずでしょう!」と五歳未満の子供を連れてきた大人を批判しているアンケートが「ズルして連れてくればよかった」というアンケートの三倍以上あった。
 そして「ズルしちゃいけない!」と書いたアンケートのほとんどが、十歳から十三歳までの子供が書いたものばかりであった。

 それを読んで私は、世の中まるでさかさまではないかと思った。そして、子供の書いたアンケートが「ズルイ者勝ちですよネ」という大人のアンケートの倍以上あることに救われる想いがしている。同時に、大人と子供が一緒に観るミュージカルを、これからも上演し続けたいとあらためて思った。

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