人権教育を、「生徒 自らつくる 演劇で!」
−とちぎの高校生人権劇場事業発表会に参加して−
天 城 美 枝
 2011年度、栃木県教育委員会の人権教育室が主催して、県下高校に人権に関わる作品の上演を募集したところ、その呼びかけに応えて、5校が参加しました。
 去る5月28日には「スタートアップセミナー」と称してのワークショップが行われ、そこに新生ふるきゃらが講師として参加しました。ふるきゃらとお付き合いの長い新芸座から演出家の赤澤勇司氏、舞台監督の実川太一氏と、天城美枝が参加、各学校に付き添い、「人権とは何か?」の話合いから始まり、作品化の討議を経て、生徒達が一日で作品をつくり、稽古もして、その日に試作を上演するという体験でした。
 そして一旦学校に持ち帰った生徒達は、半年間さらに検討を深め、新しい作品に挑戦して持ち寄り、12月11日の発表会となりました。
 発表会の審査員の一員として、ふるきゃらから天城が参加することになりました。審査項目は4つ、@テーマに一貫性があり、ストーリーがしっかり組み立てられているか、A表現力はどうか、B人権の視点がしっかりしているか、C社会への広がりがあるか、明るい展望があるか、という大変難しいものでした。
 各学校が演じた作品は、生徒達にも大変身近な内容が多く、特に教室での「いじめ」の問題は当事者でもある生徒たちの目で深く掘り下げられていました。
 そして市井の弱者への目、ちょっとした親切に躊躇する気持ち、でもそれを勇気をもって踏み出すことで味わう喜びなどが繊細な目で表現され、審査員の高い評価を得ていました。
 高校生とは思えない完成度の高い作品や、キャラクターのしっかりした演技、大胆な演技で観客の笑いを誘うものなどあって、大変感心させられました。
 当日演じられた作品は後日、DVDに収められ県下の各学校に教材として配られるということです。同じ目線の高校生自らの演じた作品は、多くの生徒達に身近に興味深く受け止められることだろうと思います。一見難しく堅苦しい人権教育を、「生徒自らつくる演劇で!」という栃木県教育委員会のユニークな発想と視点に、演劇に携わる者として大変共感しました。